私は青年に無理を言って『てれび』に出ていた男の元へと向かった。
しかし、『てれび』に出る芸能人(と呼ばれるものらしい)に関係者でもない人間が会うことは難しいようだ。
あの男が私の父様であるわけがない。そうわかっているはずなのにどうしても会って確かめたいと思ってしまうのだ。
あの男が映っていた『てれび』を放送していた建物から出て肩を落としていると、近くの建物の戸が開き、そこから人が出てきた。
その人物を見て、私は目を見開いた。
「そんな…」
そこにいたのは、あの赤い髪の男―――そして、彼に寄り添い笑う女。
「そんな、そんなことって…」
「あ…。……だ、だから言っただろ?あれが父親なわけが…」
「信じられない、こんなことって…」
青年から慰めの声をかけられる私は涙を浮かべながら男に寄り添う女を見つめていた。
「かあさま…かあさまだ…!」
あの笑顔、青い瞳、間違える筈がない。あれは私の母様だ!!
「えっ!?」
驚き戸惑う青年を尻目に私はあの男女――父様と母様を追いかけた。
こんな偶然があるわけがない。あれはきっと間違いなく私の父様と母様だ!!
「父様、母様、私です!あなた方の娘はここにいます!!」
息を弾ませながら二人を追いかける。しかし、二人は私に振り返ることなく人混みの中の道を行く。
「待って!とうさま、かあさま…!」
呼び掛けても二人はこちらに振り向かない。
涙で滲む視界の中、二人は人混みの中に紛れていく。
「やだ、まって…!」
人混みを掻き分け、ひたすらに二人を追った。
人混みを抜けた直後、横から牛の悲鳴のような大きな音が聞こえた。
そちらを見れば、巨大な四角い鉄の馬がこちらへと迫って――
「って夢を見たんだ!!」